「農園レストラン 松野や」オープンへ ~ご夫婦の想い~

 更新日:2012年10月18日(木)

10月7日(日)。
この日わたしたち売り子手伝いメンバー6名は、山形県庄内市余目(あまるめ)に向かいました。
「あまるめ秋まつり ワクワクあまるメッセ2012」イベントに出店するお惣菜屋、「松野や」さんの売り子のお手伝いのためです。
南三陸町から山形の会場までは、車で約3時間の道のり。
夜明けから仕込んだ大量の炊き込み御飯の香りに満たされた車内の中で、
松野さんの奥さんは窓を見つめながら二度、こんな言葉を繰り返しました。
「せっがく生がされた命だから、もうちょっと生きたい」
一度目はつぶやくように。二度目は、自分に言い聞かせるように――。
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松野 三枝子(まつのみえこ)さん。
私が初めて”松野さん”の名前を耳にしたのは、ボランティアに参加した初日の終礼報告でした。
各チームがその日の活動内容を報告する場でとある学生の男の子が、
今日体験して感じた出来事を、緊張の面持ちで発表していたのです。
「今日は松野さんの畑の草むしりをしました。奥さんとお話する機会があり、震災や病気の話を聞きました。
いつも笑顔で一見すごく元気なのに、実はかなしい体験をされていたんだと知って、なんか・・・ショックでした・・・。
農園レストランを作りたいという話を聞いて、すごく楽しみだし、その夢を自分も手伝わせてもらいたいと思いました」
“どんな方なんだろう”。
その報告を聞いて以来、わたしの心の片隅で存在し続けてきた、まだ出会ったことのない”松野さん”。
あれから1ヶ月半。
二度目のボランティアで再来した初日の活動で、松野さんのお手伝いの仕事が巡ってきました。
イベント販売の売り子です。
「おはよー!よろしくねー!!」
出発は早朝。
まだ夜が明けきらない薄暗い光のもとで、調理場からエプロン姿でニッコリと笑顔の女性が顔をのぞかせました。
元気でよく通った明るい声。
ボランティアの仲間から聞いていた通りの、お人柄でした。
そしてごはんを車の荷台に積んで、慌ただしく出発。ようやく車内でホッとした時、松野さんが寂しそうに言ったのです。
「せっがく生かされた命だから・・・」、と。
“この方もまた、震災でつらくかなしい体験をされたんだろう”
言葉の確かな意味が分からず、その時は曖昧にうなずくことしかできなかったわたしに、
後日再会した際、松野さんはすべてをお話してくださいました。
震災よりも前に病に伏せ、助かる見込みが薄いと医師から宣告されていたこと。
3.11のあの日は志津川病院にいて、偶然にも午前中に輸血の針が抜けていたために地震が発生した後、身動きがとれたこと。
上に、上にと逃げてきた松野さんが目にした、ニュースの報道でも語られることのない、嘘のような現実。
松野さんの言葉を通して、目を覆いたくなるような光景と体験が、わたしの頭の中で再現されてゆきます。
そして痛いほど感じる。
気持ちがわかる、とは決して言えないし思えないけれど、
苦しくて、つらくて、目の前で消えていった命をどうすることもできなかった無念さを・・・。
お話しの最後に、松野さんは涙で目を濡らしながら、キュッと結んだ口を上にあげて言いました。
「生きていることが奇跡。でもこうして考えてみると、神様が”何かをしなさい”ってわたしを生かしたのかもしれない。
みんなに助けられた命だもの。もう少し生きたい。
だから農園レストランを開いて、わたしのごはんでみんなを元気にして、もらった命を還元したい」
松野さんの農園レストランは、11月末頃のオープン予定だそうです。
自家栽培の無農薬野菜で作る、ごはん。
そこには、「元気に生きてほしい」という、松野さんの思いが隠し味で入れられていました。
わたしも食べさせてもらった、うにごはんや海鮮はっと汁が、こんなにおいしかったワケ、わかった気がします。
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海鮮はっと汁をつくる、松野さん。
ちなみに、いくつもの困難を乗り越えて「自分が生きていることが奇跡」と話す奥さまが今、笑顔で屋台のお店に立つことができることにも、大きなワケがあります。
口数が少なく、でも奥さまのことを誰よりも理解し、困ったときに黙って手を差し伸べる、旦那さまの存在です。
パワフルな奥さまと、寡黙な旦那さま。
対照的な性格のふたりが、売り子のお手伝いをしている私たちの横で、時々口げんかを始めてドキドキしたこともありました。
でも、けんかの後、旦那さまが居ないところで奥さまが漏らすのです。
「あの人が居なかったら、今のわたしはいない。こうして働けるのは、全部あの人のおかげ。感謝してるのよ」
って、けんかを見られたことを照れくさそうに笑って。
お互いを支え合いながら、笑顔と料理で周りの人を元気にさせてくれる、すてきなご夫婦。
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露店を一緒に切り盛りする奥さまと旦那さま。
10月でボランティアを終えるわたしは、
夫婦二人三脚で営む「農園レストラン 松野や」の開店に立ち会うことは出来ないのが何よりも残念です。
けでど、またここに戻ってくる楽しみを与えてくださったおふたりに、感謝しています。
地元の方も、県外の方も、みんなの笑顔があふれる、すてきなレストランになりますように――。
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松野さんご夫婦とボランティアメンバー
ランド
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