サケの川のぼり

 更新日:2012年10月17日(水)

サケが川をのぼる。
川で卵からかえり、広い海へ出たサケが、卵を産むために再び自分が生まれた川に戻って。
川の流れに逆らい、力を振り絞って故郷に帰ろうとするサケたち。
中には、川の勢いに負けて途中で力尽き命を落としてしまうサケも・・・。
命をかけ、やっとの思いで故郷にたどり着いたサケは、ついに産卵という役目を果たした後、オスもメスも、やがて息を引き取る――。
あまりにも神秘的で感動的なこの話。
初めて聞いたときは、まるでおとぎ話だなと半信半疑でいました。
けれど。けれど・・・!
ここ南三陸町で、そして私たちが生活している拠点のすぐそばの水尻川で、ゆらゆらと水の中に揺れる影がちらほらと。
サケです、サケが川をのぼってきました。
あの話は本当だったんだ。すごい。うれしい。
水面から背びれをのぞかせて、彼らが通るところには光の波紋がゆるやかに描かれます。
中には水しぶきをあげて、大きくジャンプするサケも。
産卵という生涯の目的を果たそうとこの川に戻ってきたサケたち。元気いっぱいなようです。
すごい! うれしい!
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川をのぼるたくさんのサケたち。
サケの生命力に感動し、気持ちが高揚するまましばらく川を眺めていたら、「いるかー?」と地元の方が話しかけてきてくださいました。
「おー!いるいる!」
明るい声を上げたあと、しばらく黙って川を見つめたその方は、つぶやくように言いました。
「水面が高いな。やっぱり、地盤沈下の影響だな・・・」
ドキリとしました。
そしてよく見てみると、水底にはまだ瓦礫が残っていることに気づきます。
変形したガードレールや、鉄パイプの塊。
川沿いに立ち並ぶ樹々もまた、塩害で赤茶色に枯れてしまっています。
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サケが泳ぐ水尻川。川向こうの林の樹々は、塩害の被害が見られました。
それでもサケは、瓦礫の上をゆらゆらと泳いでいます。
1年半前、ここを大津波が襲ってきたことを知ってか、知らずか・・・。
いえ、知っていても知らなくても、そんなことサケには関係ないことなのかもしれません。
たとえここに津波が来て、未だに津波の爪痕が残されたままでも、
ほかのどこか別の場所では、だめだから。
ここが、彼らの故郷だから。
ここ被災地で生まれ育ち、復興に向けて立ち上がろうとする人たちの想いと、
サケの姿が重なる。
サケたち、がんばれ。
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もうしばらくした後、サケの川のぼりのピークを迎えるようです。
昨年の11月頃には、この川がピチピチと跳ねるサケでいっぱいになったと聞きました。
この川で、また新しい命が生まれる。
その命はまたここに戻り、新しい命を与える。
巡り巡る、命の連鎖。
サケたち、がんばろう。
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夕暮れに染まる、秋の南三陸町
ランド
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