波と海におもうこと

 更新日:2011年12月10日(土)

南三陸の、町と、深い入り江を見晴らす崖に、観洋という立派な温泉ホテル
があります。海に向かって大きく開けた露天風呂が、南三陸を訪れるボラン
ティアたちにも大人気です。
群雲からもれる月明かりが、不思議な陰を海におとしていたある夜、露天風
呂でたまたま一緒にお湯に浸かっていた女性と、なんとなく言葉をかわして
いたところ、そのひとは、波と海を描き続ける南三陸出身の画家、外立とし
江さんでした。
優しく広がる薄暗い海、波間で休むぽってり肥えたカモメたち。
ポツポツと話し始める外立さんの話は、そんな南三陸のおだやかな夜とは対
照的に、震災で7人もの家族・親戚を失った彼女の胸のちぎれるような悲し
い心のうちでした。
人は、人の悲しみを、どこまで想像できるでしょうか。
南三陸の町の人と言葉をかわせば、いつも気さくでおだやかな笑顔でこたえ
てくれる。
でも少しつっこんで話していると、どんな人の背後にも、人それぞれ抱えて
いる壮絶な体験がちらつくのです。
テレビや新聞やネットで見聞きするのとはレベルが違う、生々しさに触れて、
愕然とする瞬間が、ボランティアとして南三陸で過ごすうちに、いくつもあ
ります。
時間がたつにつれ、表面的なところではがれきもどんどん片付けられ、心の
傷も癒されていっているように見えるのだけど、その薄皮一枚の下に、はり
さけそうな悲しみをみんな抱えている。
「東北大震災」、「被災者」という大きなくくりでとらえているだけではけ
っして感じることの出来ない、一つ一つの、個人的な、悲しい体験を、全力
で想像力をはたらかせて、思いやる、それが震災後にやってきた私たちに必
要な心がけだと思います。
そしてそれは、被災者に対して限ったことではなく、人と人が接するとき、
いつも必要なことだと、あらためて思い知らされています。
外立とし江さんの絵はすべて海と波。そしてどの作品にも、波を見て、海を
見て’誰かを想う’、そういう気持ちがあらわれている気がします。
そんな彼女にとって、南三陸の海を見るのは今は本当につらいことでしょう。
たまたまお風呂で出会っただけの私には、何も出来ないけれど、海を見る度、
波を見る度に、外立さんとお風呂で一緒に眺めた薄明かりの海のことを思い
出して、この海でなくなった人たちの苦しさ、この町の人たちの悲しさに思
いをはせてすごしています。
広報チーム 阿部倫子
 
 
 
ホテル観洋からの眺め
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画家外立とし江さん
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震災翌朝の南三陸の海「オレンジ色の夜明」
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